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官能的妄想
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始めるまでがいつも最高に緊張する。キスするのがためらわれてしかたがない。恥ずかしい。今さらながら、粘膜がこすり合わされる瞬間は緊張の一瞬。 間近で瞳の奥をのぞきこむと、私の体が準備し始める。どこと、どこをどう、つなぎ合わせれば彼を幸せにできるのだろうか。気持と競り合いながら、頭が勝手に動き出す。 久しぶりのキスに涙が出そうになる。悲しいんじゃない。嬉しくても泣けるのだ。何度もくりかえす。あたたかい唇にふれる。もっと、もっと泣いて、私の体。体じゅうの穴という穴から涙を流せ。 ほっとしたような彼の横顔をながめる。何も考えていない顔に私もほっとする。頭を飛ばせ。頭の中を全部キスで飛ばして。私の一番苦手なことをしてあげる。本当は一番そうしたいのだから。 明け方の横顔はヒゲが伸びてチクチク痛い。唇をはわす。そのいばらでいじめて。私の中の女の顔が、擦りへらされた肌からむき出しになるから。首筋からアゴへ、耳元から髪のはえ際へ。その恍惚の表情で、もっともっと私を女にして。 手を伸ばすとそこにある、熱く膨張した肉体。意思を持った肉片は、もう一人のりっぱな人格。ファスナーをおろすのももどかしくて、荒々しく手を突っ込んだ。ぬるりとした感覚の中に、あなたの息づかいがシンクロしてくる。どうして欲しいのかじゃない、私がどうにかしたいのだ。それに気付いた瞬間、私は耳元で囁いた。 したい? うーん 私は彼の体液を手のひらで感じながら、ちゃんと濡れている。自分でもわかるぐらいにあそこはすごいことになっている。自分から欲しいと思うのは久しぶり。それほどまでに、私の手のなかで弄ばれて、ぬらぬらと光っている彼の物はいとおしいのだ。 ちょっとまっててね この間のやつがバッグに入っているんだよね あった、あった つけるよ、そのままにしてて 注意深く皮膚をかぶせる。快楽だけを届けてね。私のあそこと望まれない原因を遮断する第二の皮膚は、されるがままの肉棒につるりとからみついた。長くて熱く波うつさまにしばしみとれる。 じゃぁ、脱ぐよ アタシも脱ぐから見ないでね 彼はジーンズを脱いで、私はストッキングとショーツを脱いで、あとは服を着たままのみだらな動物になる。 濡れてるの?大丈夫?演技することないんだよ ううん そんなことないよー 大丈夫… 寝ている彼の物は重力に逆らっている。私は、先端を洪水にあてがって、ゆっくりと腰をおろしていく。あそこから全身に感覚が移っていく。つながっている安堵感が押し寄せる。たまらなくなって根元まで深くくわえこむ。私が動く度にベッドがきしんで恥ずかしくなる。あそこに力をこめて、離したくない。私が溶けてなくなるまで、あなたが蒸発して消えるまで。ずっと、ずっとこうしていようよ。 ダメだよすぐいっちゃう いいよそれで ダメだよまじで いいって 遅刻しちゃうから会社 そうだよね そうだよ うーんでもいきそう だからいいってば 笑ってる場合じゃないって、早く! そうだよね いくよ! あたしのアソコは、あなたを記録する。私はその幸せを自分の中で形にする。別々の体がひとつになれる。そこに愛さえあれば。 |
Presented by
Megumi Hinokiyama
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