up data 1997.9.21

頭を止める日
 

今日は頭を止める日。
考え続ける頭を止める日。

友達の電話で起こされる。特に用件はなし。
テレビをつけっぱなしで朝食を食べる。
携帯電話とソフマップカードの料金明細書を見る。
ジーンズとブルーのシャツに着替える。
近くの店で差し入れを買って
知り合いの個展を見にギャラリーへいく。
以前から気になっていた雑貨屋をのぞく。
近所のスーパーマーケットに買い物、母の運転手で。
親戚のお姉さんから電話が入る。
久しぶりに家族での夕食を食べる。
お風呂に入る。
メールをチェックする。

9:30pm
もう寝るばかりの一日だったのに、
あの人から電話で呼び出される。
「会いたいから」だという。
いろんな理由を考えて、会いたい気持はあるけど、
今からは明日も早いし、それに今日はもう終わりにしようと思っていたし
今からまた始めるのは、休んだ頭がまた動き出すから
それはちょっと嫌だなと思った
それでも、迎えにいくと電話を切られた
断わったら嫌われると思うから断わらなかった。

妄想?いいや、これは思い込み。
車がついた連絡があるまで、念入りに化粧でもしよう。

 

 

 

電話はならなかった。
時間が過ぎても、なんの連絡もなかった。
不審に思って連絡をしてもつながらない。

やっと電話がきたのは12時近く。
猫をよけようとして、車が横転したという。
近くの先輩の家にいるという。
少しアゴを切って、赤のワゴンRは廃車状態。
とにかく、着替えを持って家を飛び出した。

ついたら、もうすべて済んだ後だった。
迷惑かけるから、友人に連絡をして済ませたのだという。
血だらけのTシャツを着替えさせ、そろそろと帰る友人達に頭を下げた。
いつもお世話になっているマスターの喫茶店。
駐車場にボロボロの車があった。今日はここへ止めてもらうことにした。

生きていてよかったね。
車めちゃめちゃだよ。猫ひいちまえばよかった。
そんなこと言わないで。よかったじゃない。

誰もいない店でセックスをした。
そうするのが当然のように。
私は濡れなかった。辛かった。
頭の中で違うことを考えようと必死になった。

今日は頭を止める日。
考え続ける頭を止める日。
そのはずだったのに深夜に車を飛ばして。

泣きながら家まで帰った。
自分が小さく小さくなっていく想像をした。
なんの涙だかわからなかった。

 

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Presented by
Megumi Hinokiyama
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