up data 1997.9.18

セックスファンタジーという妄想
 

久しぶりにあったその人は、つきあいのあった会社の営業。
39歳。ロブスターを食べながら会社のグチを聞く。
関係がいやになり、距離をおくようになって1年。

「俺とあわなかったあいだ、誰かと寝たのか?」と聞かれた。
めんどうなので10人と答えた。
「なんでそんなにたやすく寝るんだ?」ととがめられた。
必要とされているからと答えた。
(男に抱かれているとき、私には意思がない)
その人は、執拗に相手に嫉妬すると繰り返した。

SEXは弱くなったように思えた。
早く終わりにしたくて、自分からメチャメチャに腰を振った。
「お前はなにも変わってない」と言われた。
あそこの具合も、好きだといった腰のラインも。
濡れていないのに入れてきた。なにも付けていない。
痛いというと「そう言われるとなおさらいじめたくなる」
と言われて何も言えなかった。
(男に抱かれているとき、私には意思がない)
私のお腹の上で「いいよ、すごくいいよ」と繰り返す。
私は、腕の重さでさえいやで苛立ってくる。
酒の匂いがする息が苦しくなる。
なんで良くないのにしてるんだろう。
男のセックスファンタジーの再生機。
私はきっと、穴だ。

「ありがとう、よかったよ」と言われて、
なんと返事していいか困った。
私もよ、の一言が言えなくて
そう思わなかったのだから仕方がなくて
仕方がないから嬉しかったよ、と言った
「私を思い出してくれて嬉しかったよ」
「私を抱いてくれて嬉しかったよ」
「気持ちがよくなってくれたなら、嬉しかったよ」
「ロブスターはじめて食べたから嬉しかったよ」
「嬉しかったよ」
「嬉しかったよ」

外に出たら、雨がやんでいた。
私が車で送って、4時ごろ家についた。
気がつくと、その人の傘が車に残っていた。
(穴の自分には意思がない)
また、会わなければならない。

 

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Presented by
Megumi Hinokiyama
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